日本写真印刷コミュニケーションズ株式会社

デジタル印刷|コラム


22.04.01

デジタル印刷で出版物の適正な部数はどうなるの?

必要最低限の部数を印刷することで、在庫・廃棄のリスクを低減します

 出版物を製作・流通する上で必要となる費用として、印刷費と在庫管理費があります。印刷費はプリプレス費用に加え用紙代などの材料費および印刷・加工の工賃で構成され、一般的には一度に印刷する部数を多くして、固定費を分割することで一冊あたりの単価を低くすることができるとされています。一方、在庫管理費は販売における機会損失を回避するために、製作した出版物を保管・管理する費用を指し、量が多くなるほど費用が増大します。このことにより販売による利益を最大化するためには印刷部数の適正化が非常に重要なファクターであることが分かります。
 この課題の解決策として、小ロット対応を得意とするデジタル印刷機の活用が有効です。これにより、一度に印刷する部数を小さくすることで在庫・廃棄負担を低くし、在庫が少なくなったら小ロットの素早い増刷によって対応します。

デジタル印刷で小ロットかつ高品質での印刷が可能な理由とは?

デジタル印刷が小ロットを得意とする要因は、刷版工程がないことや丁合プロセスを省略するなど製本工程をコンパクトにすることができる点にあります。中間工程を短縮することで材料費や準備時間を減らすことができ、コスト低減および短納期対応を実現します。
 従来、デジタル印刷はオフセット印刷と比較して、印刷品質が劣る、使用できる用紙に制限があるというのが一般的な評価でした。弊社ではオフセット印刷と同等の色再現・印刷品質を実現することをコンセプトにNissha Digital Printing(以後、NDPと略称)を開発しました。現在使用しているデジタル印刷機はフィールドテストの段階でメーカーとの共同開発に参画し、エンドユーザー視点で求める品質が再現できるよう試行錯誤を繰り返しました。また、平行する形で印刷データの加工およびオペレーションのノウハウを蓄積することで、オフセット印刷とのカラーマッチング精度を最大限に高めることができたのです。加えて、本来デジタル印刷が苦手な用紙についてはNDPではアート紙やコート紙、凹凸のあるエンボス紙まで幅広く対応ができます。NDPはプレコート(インクを用紙に固着させるための下処理)が不要のため、用紙の風合いを損なわないといった特長を兼ね備えています。

出版印刷におけるNDPの活用事例

 美術関連の印刷物を中心に、初版から重版まで一貫してデジタル印刷フローで製作といった実績が増えつつあります。その中でデジタル印刷機が持つオフセット印刷より広い色再現領域を最大限活かした活用事例もあります。オフセット印刷では実現できなかった彩度の高い色領域やシャドウ部の豊かな階調の再現性を評価いただき、NDPを採用していただくことも多数あります。
また、デジタル印刷の色再現をオフセット印刷と同等にすることで、印刷部数に応じて印刷方式を使い分けするケースもあります。大量部数を印刷する初版ではオフセット印刷を使用し、重版以降の小ロット部数ではデジタル印刷で対応するといったことが可能であり、過去の事例においても色・品質の再現性について高く評価いただいています。
具体的な事例の一つとして、2017年に発行された『運慶大全』(小学館)は、出版社のデジタル印刷活用の先駆けとなった作品です。鎌倉時代の彫刻家・運慶が手がけた全仏像を網羅した初めての作品集は、デジタル印刷機で印刷されました。本体価格が6万円と決して入手しやすいものではありませんが、小ロットの増刷を繰り返し、現在は8刷に達しています。
豪華美術書ということで、単に小ロットで印刷できれば良いというわけではなく、お客さまの求める高い色調品質に応える必要がありましたが、デジタル印刷のクオリティを引き上げたことで、この企画が実現しました。価値のあるコンテンツを少部数で印刷でき、適正な価格で販売できるモデルができたことで、その後小学館さまではB2サイズの超豪華美術書「SUMO本」シリーズなどの発売にもつながっています。

まとめ

 出版物の特性に応じて、適した出版部数や重版の頻度があります。今回は出版印刷を例に説明をしましたが、商業印刷におけるカタログやパンフレットといった印刷物製作においても、使用部数が読みにくい修正の可能性や廃棄のリスクを考慮した小ロット部数での発注や制作サイクルの見直しが可能となります。このようなニーズに柔軟に対応できるソリューションとしてNDPを是非ご活用ください。
※NDPはNISSHA株式会社の登録商標です。
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