日本写真印刷コミュニケーションズ株式会社

AR・VR|コラム

25.06.13

製造業における3Dデータを活用したデジタルツインとは?

AR・VR|コラム

25.06.13

製造業における3Dデータを活用したデジタルツインとは?

近年、製造業では業務効率化や新たな価値創出のために、物理空間をデジタル上に再現する「デジタルツイン」を活用する動きが加速しています。デジタルツインを活用することで、企業は様々なメリットを獲得することができます。さらに、デジタルツインにおいて重要となる3DデータやXRの活用についても解説します。

デジタルツインFirefly生成画像1

デジタルツインとは?

デジタルツインとは、現実世界に存在する製造現場や製品など物理的なものを、デジタルの仮想空間上に双子のように「再現」したデータです。現物とデジタルが同じようにペアで存在することになるため、たとえ現物がすぐに確認できなかったとしても、デジタルツインによって現物や現場の状況を容易に確認することができます。
またデジタルツインデータを一度作れば、シミュレーションやプロモーションなど様々な用途に活用することも可能で、事業のDX推進にも繋がります。以下にデジタルツインの具体的な例をご紹介します。

デジタルツインFirefly生成画像2

デジタルツインの具体例

◆3Dマップ

既にみなさんによく使われている例としては、AppleやGoogleなどのMAPアプリで表示される3Dマップが挙げられます。現実空間をそのまま3DCGとして再現することで、より空間や位置関係が把握しやすくなり、建物の形も分かりやすくなっています。また、GoogleのストリートビューやAppleのLookAroundといった、360度実写撮影したVR上の道を進んでいけるサービスも、デジタルツインによって現実空間の情報を把握しやすくした例と言えます。


◆建設業界のBIM

建設業界では、これまでのように二次元の図面だけでなく、3Dで表現された図面データを中心とした建築物の情報管理システム(BIM)が使われ始めています。これは、設計や工事における建物全体の情報、細かい部材などの情報や進行スケジュールなど、これまでバラバラに存在していた多くの情報を1つの3Dデータ上にリアルタイムで集約することで、関係者全員が全体の情報を効率的に把握することができるシステムとなります。このように、複雑なデータを3Dデータに多くの情報を集約させて現実空間と同じように直感的に把握できるようにするメリットもあります。


◆工場のモニタリングやシミュレーション

工場の現場の物理的な空間をそのまま仮想空間上に3DCGとして再現し、さらに現場の工場に多数取り付けられたセンサーからのデータを3DCG上にリアルタイムで反映させていくことで、今の現場の様子をリアルタイムで簡単に監視・把握することができます。さらに、これから工場設備の変更を行おうとしている場合には、変更後の工場の様子を3D空間上に再現し、設備の動作を再現した3Dアニメーションによってラインの生産性やオペレーターにとっての課題点などを事前に直感的に把握することも可能となります。


◆航空機・自動車等の運転シミュレーター

航空機の操縦や危険な状況の体験など、現実世界では容易には再現しづらいようなシチュエーションも、現実空間を再現したデジタルツインを活用することで簡単に、しかも反復して体験することができるようになります。VRゴーグルなどを装着すれば、より体験の臨場感が増し、学習完了までの時間が座学の場合の1/4にまで短縮できるという調査データもあります。


◆文化財の3Dアーカイブ

美術館や博物館では数多くの貴重な文化財を保管・展示をしています。文化財を多くの人に見てもらい、作品に触れてもらうことは重要な使命ですが、展示スペースや維持管理などを考えると、常に一般公開できるわけではありません。そこで、文化財をリアルに再現した3DCGというデジタルツインを活用することで、Webサイトからリアルな収蔵品の3DCGを確認したり、AR(拡張現実)技術を使うことで、スマートフォンのカメラ越しに原寸大のリアルな文化財を自宅のテーブル上に置いて見たりといった活用も可能となります。また文化財の研究者にとっても、現物の外観をすぐにリアルに確認できることはメリットがあります。

デジタルツインFirefly生成画像3

デジタルツイン活用の2つのパターン

ここまでデジタルツイン活用の具体例を見てきましたが、活用の方向には大きく分けて2つのパターンがあります。それは、「機械」のためのデジタルツインと、「ヒト」のためのデジタルツインです。


◆機械のためのデジタルツイン

近年、自動運転車やロボットなどが活用される場面が増えてきましたが、それらが自律的に判断して動くためには、機械に周囲の環境を理解させるために、現実空間をデジタル化してストックし、それを機械に認識させる必要があります。これは、いわゆるマシンリーダブル(機械判読可能)なデータとしてのデジタルツインとなります。機械が理解できればよいため、ヒトが見て分かりやすいような3DCGなどの「可視化」は必要ありませんが、自動運転車などは瞬時に状況を判断する必要があるため、機械が素早く処理できる形式のデジタルツインである必要があります。


◆ヒトのためのデジタルツイン

AIなどの発達により機械が自律的に処理してくれる場面が増えた一方で、現在でもヒトが確認して判断する必要のある場面がほとんどだと言えます。ただし、ヒトの働き手はどんどん不足していくのに対し、把握すべきデジタルの情報量は加速度的に増大しているのが現状です。このため、今後はヒトがスピーディに大量の情報を把握し判断することが求められています。
大量の情報を、ヒトが見て瞬時に分かりやすい形で表示するためには、大量のデータをバラバラに表示するのではなく、ヒトが普段見慣れていて最も把握しやすい「現実空間」を再現した形の3D空間上にデータを「可視化」し、集約することが重要です。このような3DCGによる可視化は、業務の習熟度が低いスタッフや、ITリテラシーの低いユーザーにもデータが理解しやすくなるため、情報コミュニケーションの円滑化に繋がり、働き手不足の中でもデジタル人材を増やすことに繋げられます。
多くのデジタルデータを現実世界と同じ3D空間上に可視化し把握しやすくするという表示方法は、最近では「空間コンピューティング」という言葉としても注目されています。
なお、本記事では主に、「ヒトのためのデジタルツイン」について説明しています。

デジタルツインの導入の流れ

デジタルツインに限らず、新しい仕組みの導入には、まず自社の情報や課題の分析、それを元にした施策のゴールやプランの設定が必要です。
上記を設定した上で、デジタルツイン導入に必要な、データの入力→出力の流れについて説明します。


◆入力

まずは現実世界にある様々な製品や空間などを3Dデータとして「入力」し、デジタルツインとしての3Dデータを取得します。現実世界をデジタル上へ、できるだけ忠実に再現することが、データの活用の幅を広げるためのポイントとなります。粗いデータだと用途が限られますが、予め高精細に入力をしておくことで、そのままハイエンドなデータとしても、圧縮してローエンドなデータとしても活用できるため、使い勝手が増します。


◆出力

現物や空間を再現した3Dデータを作っただけでは意味がないので、ヒトが活用しやすくするために、このデジタルツインデータを、デジタル上から再び現実世界へと「出力」する方法を決めます。たとえば、3Dデータを、ヒトが見やすいように3DCGとしてPC画面上で表示したり、スマートフォンやタブレットのカメラ越しに現実空間にAR表示したりするなど。最近では「ARゴーグル」や「ARグラス」などが各社から発売され、現実空間にデジタルツインを表示することで作業をしながら必要なデータをリアルに確認することも可能です。現物が無かったり、現場に行かなくても、デジタル上でリアルな確認やシミュレーションなどが可能となります。場合によっては、3Dプリントによって再び物理的な形として出力することもできます。

まとめ

3Dデータによるデジタルツインは現在非常に注目されている分野で、特に3D表示のソフトウェアやARグラスなどの表示デバイス開発に各社が注力して取り組んでいるため、活用のための環境が一気に整ってきています。様々なメリットのある3Dデジタルツイン活用を、スモールスタートでも今のうちから取り組み始めておくことがとても重要となっています。

当社はさまざまな製造業のお客さまへ3Dデジタルツインを導入した実績がございますが、全く経験の無いところから始められるお客さまも数多くおられます。当社では少額でスモールスタートしやすいサポートも実施しておりますで、ぜひ一度ご相談ください。



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